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「映画撮影」誌から つづき【No.231】 


2013.09.04(Wed)

撮影報告『日本の悲劇』/映画撮影No.198(その2)

カラーライティング、白黒ライティング
 照明は旧知の祷宮信さん(「チーム・バチスタの栄光」「ハナミズキ」)にお願いした。本作はパートカラーを含む白黒だが、後々、DVDにする場合に全面カラーもあり得るという事をきいていた。そこでカラーのまま撮影してグレーディングの際に白黒にするという何とも中途半端な選択となってしまった。
 不二男の部屋は東南の一角をしめる。南西は引き戸の独立した六畳部屋と水回り。従って不二男が部屋に閉じこもった後は、陽の光は家の奥まで差し込まなくなる。辛うじて陽の当たっていた家は冷え冷えとした閉ざされた空間に変わる。カラー・ヴァージョンのことを考え、ライトの色温度は高めに設定。さらに薄いG系のフィルターを加えて冷たい印象にした。Gを足したのは、白黒にした場合でも、若干だがコントラストがつき、肌の調子が整うだろう、との狙いもあった。回想シーンでは逆に暖かめの色を足してもらい、現在との差を強調した。
 一番悩んだのは部屋に閉じこもった後の不二男をどのように撮るかだ。監督から言われたのは、仲代さんの顔だけが印象に残るようにしてくれという事だった。素直に受け取れば、背景をぐっと落として1/5程度の柔らかい光を正面から当てれば成立するのだろうが、リアルという事に拘るあまり考え過ぎてしまったようだ。雨戸を閉め切った部屋とはいえ、昼間なら微かな光は入ってくる。夜は夜でまた暗闇に眼が慣れていけば周りはぼんやりと見えるはずだ。庇の下にあった天窓に光源を求めた。その時間の推移の中で、不二男はそれまでのいきさつを思い出し、息子の名前を呼びながら、しだいに衰弱していく。
 そこら辺の狙いを監督に巧く伝える事が出来ず、後でお小言を頂戴してしまった。もう少しコミュニケーションを積極的に図っていくべきだったと反省している。またどんなに時間と予算がなくともテストだけはしておいた方が良いという、至極当たり前の事を改めて思った。
 言い訳を承知の上でいえば、CMの場合だと通常テスト撮影はしない。今回使用したカメラが自分の持ち物であるということもあり、高を括ったことも事実である。RAWで撮影しているので仕上げ段階での調整幅は多い。結果的に、監督の最も嫌う体制を作ってしまった。デジタル撮影が増える中で変化してきた現場作業と仕上げとの比重関係は、カメラマンとして、もう一度、真剣に向き合わなくてはならない問題だろう。

撮影機材、仕上げ
 本作の担当が決まる以前に小林監督の事務所に自前のRED ONE MXを持ち込み4Kの解像度を見てもらい、デジタルでの可能性を説明していた。フィルムで撮影出来ればよかったのだが、予算が出ない以上やむを得ない。次善の策として自機での撮影が決まった。アナログともデジタルとも言い切れない微妙なルックが出来上がったように思う。 
 レンズは所有しているCINEOVISIONのセット(24、35、50、85)に加えて、友人の井上隆夫カメラマンから、只同然で、足りないワイドと長玉を借り受けた。デジタルカメラと最新のレンズの組み合わせは画がどうしても生っぽくなってしまう。解像度や色の出方が過剰に思えるのだ。個人的な見解だが、レトロレンズとデジタルはなかなか相性がいい。かれこれ30年前には一番切れ味のあったCINEOV-ISIONも今では立派なレトロレンズだ。
 フォーマットは4K/RAW、アスペクト比は1:2.35のシネスコ。感度は640に設定し、暗部に少し余裕を持たせることにした。少ないライトにも関わらずT4の絞りを得る事が出来た。
 ファーストシーンを観てもらえばお判りだろうが、画面を隅々まで使い、左右のみならず奥への動きも加味した演出はこのアスペクト比ならではのものだろう。実はこのシーンはリテイクされたものだ。はじめのテイクでは義男の動きに合わせてパンをしていたのだが、再撮ではカメラの動きを封じ、ふたりの濃密な関係がさらに強調されている。24mmをメインにした現在に対し、回想シーンでは一転して85mmをメインに望遠系で撮影。不二男の思いが表現できたのではないだろうか?
 最終的には、フィルムでの上映を目指し、デジタルデータを2Kでグレーディング。それを元にイマレコでネガを作りカラーポジに焼き付けて仕上げている。フィルム会社のご好意によりEKとFUJIをテストする事が出来た。イマレコはマジェンダが強く出てしまうのがの弱点である。白黒のパートで、より色味の転びが少ないEKのネガ(5201)とポシ(2383)の組み合わせを選択した。

ラストシーン、直前の変更
 完成した作品のラストでは、義男はまだ仕事を見つけられず、生きているか死んでいるか判らない不二男のいる部屋の前に立ち、「面接に行ってきます。」と声をかける。脚本に書かれていたのはもっと甘い結末だったが、撮影当日、上記のような形に変更された。より“悲劇”が際立ったと思う。そして最後に付け加えられた効果音に微かな希望を感じるはずだ。撮影はともかくとして、素晴らしい作品が出来上がったと信じている。

 世界を相手に、孤高の戦いを続けている小林監督の作品が、私の劇場用映画デビュー作となったのは本当に幸運なことだった。撮影が終わって、私は脚本の裏にこう書き記した。「静かな、静かな、哀しくそして少しだけ滑稽な・・・」小林監督の熱い思いとともに、私のこのささやかな思いが本作に定着していたなら本望である。
 
監督:小林政広
照明:祷宮信
美術:山崎善
撮影助手:宇野寛之
製作:モンキータウンプロダクション

category: 映画のはなし About Movies

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