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『パンドラの匣』 


2009.10.21(Wed)

パンドラ
今年は太宰治の生誕100年で「ヴィヨンの妻」(根岸吉太郎)、「人間失格」(荒戸源次郎)、「斜陽」(秋原正俊)と続々と原作が映画化されている。それらはどれも仕上がりがそれなりに予想出来てしまうのだが、太宰には珍しいこの軽妙な原作を映画にするとなると、料理次第では愚にもつかない物にも傑作にもなりうる。冨永昌敬監督は前作『パビリオン山椒大夫』ではそのセンスに完全に置いてけぼりを食らってしまったのでどうかと思っていたのだが、予告編はなかなかの出来であったし、川上未映子の「ヘブン」を読了したばかりで、彼女が主役の一人として出演しているのも興味深かった。
で、結論から言うと大正解であった。まずキャスティングはこれ以上望めないものであった。川上未映子、仲里依紗ともに密度のある身体が好い。特に川上は映画初出演とは思えないほど堂に入った年増ぶりである。彼女のお尻が何ともチャーミングであった。それに対比されるように染谷将太(未だ16歳とは!)、窪塚洋介らの男たちが皆貧弱な肉体である(病気療養中であるから当たり前ではあるが)のも面白い。小田豊、ふかわりょう、洞口依子なども好い。ともかく配役のバランスが絶妙だと思う。夫々は原作とはイメージが些か離れているが、監督の以下の言葉がそれに応えてくれるだろう。
自分の物語として責任を取る自信がなかったら映画にできるものではないんです。
同じことは設定にも言える。竹さんをメリー・ポピンズ風にしたことで物語に躍動感が生まれた。彼女はある日バスに乗って人里離れた結核診療所(=健康道場)にやって来て、またバスに乗って何処かに行ってしまうのである。(ちょっとしたお土産付きだが・・・。)原作は手紙形式なので必然的に独白も多くなるが思ったほど邪魔ではない。発声のタイミングか音楽(菊池成孔)か何処かに秘密がありそうだ。文通相手を原作とは変えてあるのも効果的だと思う。
出だしの数シーンが面白くなければその映画は絶対に面白いものにはならない。水に映る影が儚い印象を与えるファーストシーン、竹さんがバスに揺られて健康道場に赴くシーンのリズム感。これだけで我々はこの物語りにぐいと心をつかまれることだろう。ひばりとマア坊が”密会”する場面の演出も面白い。最初ふたりは戯れのように一言ごとに裸電球を点滅させるのだが、それがいつの間にかシーン全体の基調となっていく。更には台詞が所々ダブって聞こえて来るので、それが夢とも現実ともつかない不思議な効果を上げていた。健康道場の「やっとるか。」「やっとるぞ。」「がんばれよ。」「よし来た。」と言う風変わりな掛け声は原作にもあるが、それが夫々の場面でどのように変化しているかを観るといい。映画ならではの愉しみではないだろうか。(何の脈絡もないが柛代辰巳の「エンヤーとっと」を思い出してしまった。)
無理に広い画を撮らないことで、反って診療所の奥行きが出たように思う。撮影は小林基己氏。DIによるカラーグレーディングが独特の色見を出していて面白い。道場のお仕着せもお洒落。
テアトル新宿にて。

category: 映画のはなし About Movies

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コメント

ありがとうございます。
すみません、最近になってこの記事を拝見しました。
大木スミオさんのような大先輩にこんな言葉を頂けるとは身に余る光栄です。ありがとうございます。

「パンドラの匣」は、全ての事柄(失敗も含めて)が良い方向に結びついた希有な作品になりました。単館のバジェット的にも潤沢ではない状況で昭和20年前後を表現しとうというのですから、色々なところにほころびが出てきます。その”ほころび”を”表現”という手法に変える事が出来るのが冨永昌敬の才能でしょうね。
私自身は凡人ですから、その宙に浮いた天才を地上に引き戻す作業が「撮影」という行程でした。しかし、私の巨漢の体重を持ってしても地に足の着かない地上数センチをふわふわ漂う作品になってしまったとは、冨永昌敬恐るべしです。

出来たら近々、一緒に飲みましょう。勉強させてください。
【2009/11/15 20:42】
URL | 小林基己 #FquCCNtw *編集*

小林さん、初めまして。
拙ブログへようこそ。
小林さんのお目に留まるなど考えてもおりませんでした。
勝手なことを書き散らかしているだけですm(_ _)m。

『パンドラ―』と言う最も映像化しにくい小説を
実にいい形でまとめあげられたなぁと感心しています。
今年観た映画の中では得点かなり高いです。
未だ映画にとりかかれないでいる小生としては小林さんのご活躍が羨ましいです。

勉強なんて、こちらの方こそお願いしたいです。
冨永氏のことも聞きたいですし、ご都合の良い時にでも声を掛けて下さい。
結構暇しておりますから、いつでもウエルカムですョ。
【2009/11/16 08:01】
URL | sumio #- *編集*

>ご都合の良い時にでも声を掛けて下さい。

では、今年中に実現しましょう。
近々、連絡入れさせていただきます。
【2009/11/16 17:31】
URL | 小林基己 #FquCCNtw *編集*

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