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ギャラの話。[fee.] 


2009.07.30(Thu)

おとといのエントリー“道義”に対して、当ブログでお馴染みの木下さんからコメントを頂いた。こういう話はあまりしたくはないが、避けて通る分けにもいかない。かなり長い返事になりそうなので、今日は記事を書いてその返信にしようと思う。おそらく木下さんはキャメラマンの技量とその報酬が釣り合っていないことに苛立ちを覚えているのだと推測する。ただ色々考えると我々とて決して十分な報酬を頂いている訳ではないことが解って頂けるはずだ。

まずは世の中は不公平であるというのが大前提です。私が助手の頃の聞いていたキャメラマンのギャラと自分が独立してから頂いたギャラは値段的には変わっていません。物価上昇率を考えるとその差に驚きます。しかも当時はキャメラマンの数はさほど多くなかったですから、ひとりのキャメラマンの収入たるや現在の比ではなかったはずです。
次に個別の産業の構造を考える必要があります。CMキャメラマンが一線で活躍出来るのはおよそ10年と言われています。新陳代謝の激しい業界です。しかもCM業界で常に仕事をもらえているのは30人前後とも言われています。それはここ何年もずっと変わらないようです。それ以外のキャメラマンはかなり厳しい状況にあります。特に近年はその格差が広がっています。一方、会社員であれば定年まで勤めておよそ35年は働く事が出来ます。町工場で働く技術者もさして変わりはないでしょう。(尤も昨今の経済情勢からするとその前提は崩れていますが)
「意地と誇り」の側面を見ると、それをよいことに経営者側が労働者を安い賃金で使ってきたという状況があります。人は、賃金が安くてもそれで生活出来る限り、その職を簡単に辞めたりしないものです。私はCM業界の前には映画を志していましたが、プロデューサーがスタッフに安いギャランティをのませる為に「お前は映画が好きだろう?」と常套句のように繰り返すのを聞いて、ここに未来は無いと思いました。CMプロデューサーが100万円出せるというのならそれはそれでいいと思います。個々のキャメラマンの技量には当然、差がありますから、一概に100万円が高い安いは言えません。予算の規模もあります。そもそも一般労働者の労働対価を基準に私たちのギャランティーを云々すること自体ナンセンスです。
私が問題にしたいのは以下のことです。演出家がいて同じような内容の仕事をしていても、スチール出身者とムービーキャメラマンではそのギャランティーに大きな開きがあるということです。ムービーキャメラマンは動く画の専門家です。いわば専門家の方がその専門性を正当に評価されないということが問題だと思うのです。これには様々な問題が絡んでいるのでしょうが、一番の原因は日本のシステムではプロデューサーが機能していないということではないかと思います。スタッフのギャランティーをその能力において評価出来るのはプロデューサーをおいて他にありません。しかし日本ではその権限がいつの間にか無くなってしまっています。正当に評価する機能がなければ、ネームバリューの高い人が選ばれるのは当然の成り行きでしょう。
若い人は確実に減っています。レベルも良いとは言えません。ギャラが良くなければ優秀な人材は決して集まりません。それだけのことです。CM業界もまた、他の業界同様、負のスパイラルに陥っています。おそらくギャラが1/10まで落ちたら業界全体が立ち行かなくなってくるでしょう。「意地と誇り」は始めから身に付くものでもありますまい。漠然とした憧れはその実態を知ればいとも簡単に崩れてしまうものです。

category: 【オープンルーム】Bulletin Board

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コメント


返信ありがとうございます。
僕が労働報酬に関して思うのは、いつも『搾取する側とされる側』の事です。
この世の中(資本主義社会)はあらゆる事物を差別する事で成り立ってますし、その差別社会のヒエラルキーのなかで、上位の者がより良い報酬を得るのは当然の事でしょう。
そこに上位が下位を搾取する構造が存在しますが、近年は、(と言っても僕は近年しか身を以て感じていませんが)労働者の技術を正当に評価する事無く上位が下位を使い捨ての道具として扱っているように感じます。

大木さんが問題にされていた、スチールカメラマンとムービーカメラマンの評価の違いですが、両者の間にはビフテキ屋と、蕎麦屋くらいの違いがあると思います。ただ、今の映像業界はビフテキと蕎麦の味の決定的な違いが分からなくなっているのではないのでしょうか?よって、蕎麦屋の焼いたビフテキの方が値段が高いというおかしな現象が起こっています。味覚は主観的なので、なんともいえませんが。いつかビフテキ屋の焼いたビフテキの方が高くなるかもしれません。本来そうあるべきです。
両者は同じ飲食業ですが、扱う素材、調理方法、客層、など全く異なる要素が数多くあります。
ビフテキ屋がいきなり蕎麦を打てるとは思えないし、その逆も然りです。
CM業界でスチールカメラマンの評価は高いですが、ある意味瞬発力の必要とされるCM撮影にスチール撮影で必要な瞬発力がうまく応用され、そこにネームバリューが加わり、報酬アップにつながったのでしょう。
僕は、蕎麦もビフテキも大好きですし、どっちが偉いか?なんて東海林さだおさんの世界なら面白いですが、無意味ですね。

しかしながら映像業界の人達、僕も含めて物を見る目、本物を見分ける能力は明らかに低下していると思います。僕自身危機感を持っていますが、やはり身を置く環境から影響を受けますね。
デジタルの選択の理由は種々あると思いますが、作業の簡略化の側面もあり、それがやはり新技術の諸刃の剣でネガティブに作用している事は確かです。
つまり、見るという行為、想像するという行為を省略する事によって失ってゆく物があるということです。

ギャラについてですが、撮影後ギャラ交渉という電話での儀式があります。組合の無い日本の撮影業界では制作側の良心に頼っているという事情があり、良心が無ければ極端な話で支払いが無く泣き寝入りなどという例もあります。
チーフ時代に思った事で、本来カメラマンの仕事である露出計測をはじめ様々な段取りなどカメラマンの両手両足になって働いているのに、カメラマンから何のねぎらいの言葉も無く、当然建設的、クリエイティブな関係にもなれず、がっかりした経験がありました。
アシスタントはカメラマンよりも評価されていません。それなのにカメラマンはチーフの10倍以上もらってんだなあ、と、いささか感情的な意見でした。すみません。
立場の違いもありますし、額面だけでは測れないとは思います。プロスポーツ選手のようなものなのでしょう。

【2009/08/01 08:34】
URL | 木下容宏 #- *編集*
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2009/08/04 22:29】
| # *編集*
Re: 初めて書き込みさせていただきます
横川様。初めまして。
迂闊にも今日まで、コメントがあったことに気がつきませんでした。
返信遅くなりました。
拙ブログはさほど読者は多くないので、どんなことを書き込んでも何の不都合も無いですよ(笑)物言わぬは腹膨るる業なり、です。いつでも、お好きなことをコメントしてください。お待ちしております。
なかなかオーストラリアに行くチャンスがありませんが、その際には是非ともご一緒したいです。ではでは。
【2009/08/08 09:28】
URL | sumio #- *編集*

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