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道義。[Morality.] 


2009.07.28(Tue)

先日、某プロデューサーから電話をいただいた。てっきり仕事の依頼かと思ったのだが、さに非ず。半ばレギュラー化していた仕事が来年度は出来そうも無いとの連絡であった。今年度オンエアーしている作品の出来が良いので、来年もそれを使いたいとスポンサーから言われたのだと言う。昨今の不況である。おそらく業界にいる者の多くは同じような連絡を受ける事が多くなったのではないだろうか。「出来が良い」と言われるのは嬉しい限りだが、二年目の使用については演出家やキャメラマンにはギャランティは支払われない。「道義的」にはギャランティーを支払いたいが期待しないでくれ、との丁寧な報せであった。
我々クリエイターは“ある期間のオンエアーを前提とした”商品を次々に生み出す事で糧を得ている。だから「道義的」にはオンエアー時期を過ぎての使用には何らかの報酬は支払われるべきである。それが認められないとなれば何年もオンエアーに耐えうる作品を作る事が自分の首を絞める事になるのである。私たちの仕事は一般給与所得者から見れば高額なギャランティを頂いているが、それは決して労働の対価としてだけ頂いている訳ではない。まともなクリエイターなら目の前にある作品をより良いものにしようと全力を尽くすのが性である。そこに費やされるのは実際の作業時間以上のもの、極端なことを言えば生きている全ての時間を使っているのである。そうやって出来上がった作品は企業のものであるが、同時にクリエイターたちのものでもある。

権利の話で思い出したが、助手の頃、スチール出身のある有名カメラマンに、何故CM一作品においてムービーキャメラマンとスチールカメラマンには報酬の格差があるのか尋ねたことがあった。それはスチールカメラマンが作品報酬の為にスポンサーや代理店と闘って勝ち取ってきたからだと教えてくれた。翻ってムービーキャメラマンは自分たちや後に続く世代の為に正当な権利を主張してきたのだろうか?そもそもクリエイターたちは自分の報酬について真剣に考えた事があっただろうか?自分が頂く報酬に無頓着でいて良い事は何も無い。我々はその報酬に負けないだけの仕事をしなければならない。そしてそのような自分の仕事に今以上に誇りを持つべきであろう。経済が上手く廻らない今だからこそ、夢を紡ぐ仕事をしている人間をもっと大事にすべきである、と言うとあまりに手前勝手に思われてしまうのだろうか。

相変わらず経済的には厳しい状態が続いているが、こうやって真摯に連絡をしてくれるプロデューサーと今まで一緒に仕事をして来れただけでも救いとしなくてはならないだろう。

category: 日々是好日 Days

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コメント


スチールカメラマンとムービーカメラマンの違いは、前者の場合はその仕事の性格上、自己演出能力がより必要とされますし、またその能力のある者しか生き残れないという事情もあるのではないのでしょうか?両者のネームバリューの差は歴然としていて、スチールカメラマンの方が『良い画を撮ってくれる』と一般の映像制作関係の方々は思われるのではないのでしょうか?そのように制作サイドに説得力を持ち得たのは、素晴らしいと思います。
あくまで生活力という側面からの視点ですが。

労働の対価という問題ですが、僕はCMカメラマンのギャラは高すぎると思います。
仕事の種類でピンキリだと思いますが、一本100万円という額は一般常識から比べて高くはないですか?

大田区の町工場。零細企業が、一時期よりずいぶん減ってしまいましたが、今でも世界トップレベルの職人の方々が働いておられます。『彼しか作れない』と個人を頼って発注する大企業、海外からの発注も数多くあります。そのような最高の技術を持った職人、彼が得る報酬は一般レベルのCMカメラマンのそれに遥か及びません。
それでも、彼がその仕事を続ける理由は『意地と誇り』しか無いでしょう。

CMカメラマンのギャラが今の1/10になったとしたら、それを目指す若い人達がそれでも続けるのか、僕は興味があります。







【2009/07/30 12:22】
URL | 木下容宏 #- *編集*

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