06/ 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31./08

スポンサーサイト 


--.--.--(--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

trackback -- |comment -- | 記事編集

go page top

『ある精肉店のはなし』 


2014.07.23(Wed)

 生きると言うことは、即ち、他者の命と引き換えに自分の命を長らえさせる、と言うことに他ならない。人々が食する精肉を提供するために、数年間、自分たちで育てた牛を屠殺し解体する。それを長い間生業として来た家族がいる。おそらく、血と汚物の匂いが充満しているであろう屠殺場で、つい今し方まで生きていたものの体温を感じながら、解体作業は進められて行く。(屠るとは元々、動物の体を切り捌くと言う意味らしいが)彼らの見事な包丁捌きと手際は神聖な儀式を見るかのようで、感動すら憶える。
 屠殺から始まる展開に引き込まれて、不覚にも、彼の口から解放運動が語られるまで、屠畜業が被差別者部落の主な生業であることをすっかり忘れていた。と同時に、それがこの家族の物語の主要なテーマであったならうんざりだなと感じたのも事実である。この兄弟とわたしとは同年代である。解同の活動が最も盛んだった昭和五十年前後、多少なりとも彼らと関わった故の身勝手な思い込みだが、部落差別が表面的には見えなくなっている今、ドキュメンタリーの題材として如何にも重い。だがそんな危惧は杞憂であった。想像とは裏腹に、彼らはもっともっと軽やかであった。
 ドキュメンタリーが作品として成功するかどうかは被写体が如何に魅力的であるかにつきる、などと書いてしまうと身も蓋もないのだが、それに巡り会い見事な作品として仕上げた監督の人並みはずれた臭覚と才能を感じる。屈託をまるで感じさせない彼らの表情が雄弁に語るものに耳を傾けたら好い。差別に苦しめられながらも逞しく生きて来た家族の歴史を素直に受け入れるが好い。生きることに少しでも迷っていたらこの映画を見ることを奨める。何はともあれ無性に肉が食べたくなるはずだ。それはおそらくは纐纈あや監督の眼差しの確かさでもあると思う。カメラの大久保千津奈さんもまた素晴らしい。控えめながら事物を的確に捉える眼と距離感が好い。
 上映終了後、拍手が起きた事をご報告しておく。意識の高い人たちが集まっていたにせよ、こんなことは随分と久しくなかったことだ。
スポンサーサイト

category: 映画のはなし About Movies

trackback(0) | comment(0) | 記事編集

go page top

FC2 Blog Ranking

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。