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『インセプション』"Inception" 


2010.07.31(Sat)

inception

レンズを通した光は間欠的に掻き落とされるフィルムに定着され、その画像は逆の道筋を辿ってスクリーンに投影される。映画は、奥から手前、そして手前から奥へと向かう光の直線的な運動と上から下へと掻き落とされるフィルムの連続した運動とを内包する。映画とはフィルムの落下運動のことである、と言ってもあながち的外れではないだろう。優れた映画とは映画史的記憶とともに映画固有の運動をなぞるものであり、それ自体が優れた映画論になる。
未だ『ダークナイト』の鮮烈な記憶が色褪せないのに、クリストファー・ノーラン監督はまたまた新たな興奮を我々にもたらしてくれた。本作の舞台は夢の中。他人の潜在意識の中に潜り込んではそのアイデアを盗むことを仕事にしてきたコブ(Lデカプリオ)はサイトー(渡辺謙)と言う大企業のオーナーからライバル会社の後継者の心に、ある潜在意識を植え付ける仕事を依頼される。極めて困難な仕事を遂行する為に4人の専門家が集められた。潜在意識を植え付けるためには心の最深部まで侵入しなければならない。その為に用意された夢のステージは三層あり、そのひとつひとつは疑念を挟み込む余地のないほどまでに綿密に設計される。ここで映画に多少なりとも詳しい観客なら、にやり、とするはずである。嘘を信じ込ませる為にその舞台となる世界を精緻なまでに構築すること。それは映画制作者が常に目指していることである。普通ならCGを使ってしまうような場面も極力実写で撮影されたと聞く。迫力のある出来映えは成る程と納得させられる。
夢に許されたありとあらゆる飛躍、時間と空間を自在に行き来することはそのまま映画に許されたことでもある。ニューヨークに似た町中でのカーチェイス、ホテルの廊下で繰り広げられる肉弾戦、雪山の要塞への侵入。そのどれもが既視感を伴うが、けして飽きさせない。夢の入れ子構造というアイディアが本作をより豊かにしていると言ったら些か誉め過ぎなのだろうが、深層に降りていくに従ってその時間はゆっくりと進むという規則は秀逸である。そこからタイムサスペンスを生むことは容易だろう。ノーラン監督の構成力の賜物であろうか。橋から落下する無重力状態のバンの中でどれほど豊かな時間が過ぎていくのか。わたしは映画の愉しみをここに見るのである。
更にサスペンスに隠されたもうひとつの主題、愛する者を失った男の再生の物語と読むだけでは愉しみは半減してしまうだろう。ヒッチコック、タルコフスキー、キューブリック、黒沢・・・愛すべき映画の数々。本作に散りばめられている映画の記憶を楽しむべきである。映画そのものを主題にヌケヌケとこのようなアクション映画を撮ってしまうノーラン監督の才気に脱帽せざるを得ない。ノーラン監督は最後にも謎を仕掛ける。その謎をどう解釈するか。観客個々の映画的教養が試されているようにも思えるのである。『ゴダールの映画史』を我々は傑作とは呼ばない。同じ意味において、本作が傑作と呼ばれることはないだろうが、映画を愛する者として、クリストファー・ノーラン監督の映画史的記憶を素直に楽しもうではないか。生真面目なノーラン監督のこと、深層心理を扱いながら些かもセクシャルなイメージが見当たらないのが心残りと言えば心残りではあるが・・・。
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