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『ディア・ドクター』["Dear Doctor"] 


2009.07.17(Fri)

ディア・ドクター
笑福亭鶴瓶の眼が語りかけるものこそ西川美和監督が最も拘った事のような気がする。伴淳三郎や清川虹子、渥美清・・・笑いをその職業とする者の眼差しはどこか人を刺すような鋭さを持ち危う気である。それは人間の本質に深く迫ろうとする者だけが獲得する“眼の色”なのかもしれない。鶴瓶も時折、ほんの一瞬だが、人を伺うような目付き見せる。
偽物が本物に、あるいは本物と思われていた事柄が一瞬のうちに偽物へと変わる事など今更驚く事でもない。本物であるか否かなどは本質的な事ではないに違い無い。何故ならそれを決めるのはあくまでも集団的他者であり制度であるからで、個別の事情や思いとは別のところにあるからだ。制度がスポイルせざるを得ない事柄にこそ大切なものが宿っているのである。それ故、価値の逆転が起きた時に人は口籠り、眼を泳がせ、静かに微笑み、あるいは始めから逆転など無かったかのように振る舞うのである。
八千草薫、余貴美子、井川遥らの女優陣が好い。制度の中に取り込まれ汲々とする男ども尻目に、それぞれの価値観に従って生きる女性のたくましさに西川監督は惜しみない共感を寄せているように見える。相変わらず香川照之は巧みである。中村勘三郎の存在感も忘れがたい。撮影は北野組のキャメラマン柳島克己が担当。もの静かな画で、前作『ゆれる』(撮影=高瀬比呂志)のような緊張感は無いが、余裕のようなものさえ感じられる。
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category: 映画のはなし About Movies

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