『バーン・アフター・リーディング』["Burn after reading"]
2009.05.13(Wed)
前作『ノーカントリー』ような緊張感あふれる映画を期待して行くと見事に肩すかしを食らう。好きか嫌いかは分かれるところだがコーエン兄弟の本質は寧ろこちらにあるのではないだろうか。浅はかな人間の浅はかな計画が次第に周囲を巻き込んで最悪の結果を招く。結局最後に得するのは巻き込んだ張本人。何ともブラックな話は、裏目読みすればCIAとかブッシュ大統領に対する最大級の皮肉のようにも思えるが、固いことを考えずに、それぞれの役を嬉々とこなす役者たちの競演を楽しむのが正解だろう。話の複雑さ、登場人物の多さ(と豪華さ)とテンポの悪さが災いして笑えるところで笑えなかった。ジョン・マルコビッチとフランシス・マクドーマンドに焦点を絞ればもう少し話が判りやすく、ノリの良い映画になったのではないかと思う。
今回ロジャー・ディーキンスに代わって撮影を担当したエマニュエル・ルベッキは期待通りとはいかなかった。喜劇は体質的に合わないのかもしれない。コメディーの基本はフィックス。テンポがだれるのでトラッキングはなるべく避けた方がいい。今回は音の使い方に注目。ティルダ・スウィントンと喧嘩したジョージ・クルーニーが二階に駆け上がる。ティルダと共に階下に残されたカメラは彼のドタドタとした足音を聞くだけである。やがて降りて来た彼が抱えていたものは・・・。巧い。(本来ならここで爆笑なのだが・・・。惜しい。)選曲も洒落ている。クルーニーの鼻歌などもお聞き逃し無く。
ブラピファンと思われる女性客が目立つ。御愁傷様(笑)。
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コメント
ルベッキ。期待してたのですが、コメディタッチは苦手かもしれませんね。ときどき「シリアスな映画」を観てるような錯覚に陥りました。ドラマチックで情緒たっぷりに語るような映画のほうが向いているのかもしれませんね。ディーキンスはどうやってあのブラックな雰囲気を映像に乗せていくのか、新たな研究課題になりそうです。
それはさておき、アカデミー撮影賞ノミネート作品をようやく全部観ましたが、「スラムドック」は正直「?」でした。
学生時代に自主制作映画で撮影してた頃の「よくわからんがおもしろそうなアングルだから撮影しとくか!」というノリが感じられました。「素人ぽっく」という意味なら「クローバーフィールド」のほうがよほどうまく計算されていたと思います。作品賞はこれからのインドのマーケットを考えるとアリかと思いますが、撮影賞としては?です。
個人的にはトム・スターンの「チェンジリング」も良かったですね。音楽にも驚いた。彼はこれからイーストウッドともっと良い作品を撮れるチャンスがあるし、やはり今回は「ダークナイト」が獲得してほしかったですね。
ところで、「チェンジリング」と「レボリューショナリー・ロード」は、なぜ「作品賞」にノミネートされてないのでしょうかね? どっちも作品賞を獲ってもおかしくない出来だと思います。「ベンジャミン」なんてどうでもいい作品だと思いますけど・・・。
【2009/05/15 23:18】
URL | 蚤の愛 #- *編集*
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『スラムドック』は未見です。未だいいかと思っているうちに見逃してしまいそうです。
『愛を読むひと』は試写会ですか?ディーキンス・ファンとしてはかなり期待しています。
『ダークナイト』は出色でしたね。
アカデミー賞クラスの賞レースは作品本来の出来意外の部分がかなり影響を与えるのであまり信用してませんけど・・・『チェンジリング』が作品賞でなかったのはイーストウッドだから?『レボリューショナリー・ロード』は素晴らしい作品(ディーキンス!)でしたが世相からすると重すぎるのかも。
【2009/05/16 08:31】
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